【書評】革命のファンファーレ【常識を疑うヒント】

なるほどね

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革命のファンファーレは2017年にキングコングの西野亮廣さんが執筆された本です。

あの有名なえんとつ町のプペルの制作に関する考え方や、

クラウドファンディングで記録を叩き出した裏技、

新しい時代における広告の打ち方などがぎっしり詰まった一冊です。

内容の割には量が控えめでコンパクトに読了できます。

普段読書をしない方にもおすすめできる本です。

もくじ

1.若者を肯定するところから始める

「最近の若いヤツは・・・」と大人たちは言う。

若者は経験不足を柔軟な考え方で補っていく。

まるで最近の若者は、自分たちの頃よりも劣っているかのように。

しかし古代遺跡にも似たような言葉が記されていた。

人類は今まで繁栄を止めていない。

スケールダウンを繰り返している生き物が生き残るわけがない。

もし人間が年相応に進化するなら、

iPhoneも相対性理論も、

100歳近いご老人が発明していなくてはおかしいです。


しかしスティーブ・ジョブズがアップルを作ったのは21歳の頃、

アインシュタインが相対性理論を考えたのは26歳の頃です。


若い人が新しい常識を作っていくのが世の常でもあります。

若者を否定するのはやめましょう。

常識のアップデートはいつ何時も若者が行います。

2.人類総クリエイター時代

昔はテレビが主な情報源でした。

その時代の一般人には、情報を発信する機会はほぼありませんでした。

せいぜい家族や仲間内で広めるくらいです。


しかし今ではインターネットによって、誰でも好きなものをクリエイトすることができます。

自分で創作しないまでも、好きなものや面白いものを自分のフィルターを通して発信する人は多いです。

鬼滅の刃の二次創作イラストなど、探さなくてもいくらでもあります。


彼ら「セカンドクリエイター」をこの時代ではうまく活用すると、

自分が動き回らなくても、勝手に自分の作品を世に広めてくれます。

人が自分の作品を買う入り口は、「作品を認知すること」。

その入り口に立たないと、作品を買う選択肢にもなってくれません。

3.アンチを手放してはならない

アンチの声は大きいものです。

しかしその声は、自分の作品を広めてくれる、大きなエネルギーを秘めています。

大きな議論を生ませることで、作品自体の認知度はどんどん高まっていきます。

ファンだけでなく、アンチもセカンドクリエイターになってくれています。


そして感情的になった批判は、熱が冷めると自然に消滅していくものです。


もちろん批判に負けないくらい、作品の質は高くなくてはいけません。

しつこいようですが、まずは認知されることが第一。

認知をされて初めて作品が評価され、購入する選択肢に上がってくれます。

4.人はネタバレしているものしか反応しない

あなたはものを買うとき、どんな基準で買い物をしますか?

多くの人は、商品が面白い・価値があると保証されているものを購入します。

旅行先には、とりあえず有名な観光名所を選ぶ人が多いでしょう。

昼食に行くときは高いレビューの高い順に検討していくはずです。

流行の映画を「これだけ流行っているならどれだけ面白いか」確かめたくて見に行きます。

中身のわからない福袋だって、価値がある程度保証されている福袋を選んで買います。

西野さんはいいます。

現代は無料公開をどんどんしていくべきだ。

その商品の面白さ・価値があると分かっているものにしか、人はお金を落としてくれないからだ。

5.クラウドファンディングの小技

近頃流行りのクライドファンディングとは、

わざわざ株などを作らなくても、個人でアイディアを出し、

それに賛同してくれた人が個人に寄付をすると言うシステムです。

たくさんの金額、そして多くの人に出資してもらうと、人気な企画だと判断され、

クラウドファンディングのサイトで上位に表示されます。

そして多くのクラウドファンディングでは、

出資してくれた人にお礼の商品を返すことが多いです。

多くのオーナーはこのような商品設定にします。

  1. 商品A・・・3000円
  2. 商品A,B・・・6000円
  3. 商品A,B,C・・・10000円

しかし西野さんはこのような商品設定にしました。

  1. 商品A・・・3000円
  2. 商品B・・・3000円
  3. 商品C・・・4000円

こうすると、出資金額は上の3と同額でも、

3回申し込まなくてはいけないため、出資人数が増え、

クライドファンディングのサイトでは上位に表示されやすくなります。

6.まとめ

西野さんは日常の出来事を抽象化させ、それを自分のことに転用するのが本当に上手いです。

飲み屋で仲間に本を紹介したエピソードがありました。

  1. 本を紹介する
  2. 仲間がその場でネット注文する
  3. 人は1500円を出し渋っているわけではない
  4. 本を買う「キッカケ」がないだけだ
  5. 今回の「キッカケ」ってなんだったのだろう
  6. 紹介者である私が熱意を持って紹介し、買って読むと紹介者が喜ぶからだ
  7. 紹介者と紹介される人が親密だと本を買いやすいのでは?
  8. スナックの客とママは親密な関係を築けているのでは?
  9. スナックで紹介された本は買ってもらいやすいかもしれない
  10. 明日スナックの内見に行ってきます

ざっとこんな感じです。

もちろん答えは分かりませんが、かなり理論の筋が通っております。


普通の人なら「紹介した本を買ってくれた。嬉しい。」で終わるところを、

西野さんは抽象化さ背、新しいビジネスの種にしています。

面白い気づきは人生の謎解きのようで、それだけで見ていて楽しいです。

本書にはこんな感じのエピソードが、ギュッと詰められています。


最近は世の中の常識を疑うことが流行っています。

自分で常識を疑い、新しい常識を作り出すことができたら強いです。

世の成功者は大きな常識を疑うことのできる人です。


しかし、よほど優秀な人でなければ、大きな常識を疑うのは難しいです。

大多数の人は誰かが打ち破ってくれた新しい常識に乗っかり、

その新しい常識を、身の回りの小さな常識や思い込みに当てはめればいいのだと思います。

その身の回りの小さな思い込みを打破するヒントになる一冊です。

ぜひ皆さんも本書を読んで、人生の謎解きのヒントにしてみてください。


この本を読んでから、プペルを読ませていただきました。

泣くほど面白く、全ての絵がそれぞれポスターになるくらい引き込まれる物ばかりでした。

ページをめくるたび、

「このクオリティがあれば多少の批判は関係ないわ」

と泣きながら思っていました。


本書は一冊の本として完成された読み応えがあります。

しかし同時に、「プペル」「しるし書店」「おとぎ出版」の広告でもあります。

本書でも述べられていた通り、

お土産とは「熱い思いをさせてから思い出として作品を買わせる」のが有効とのことです。

この広告も本書の最後の方に記されていました。

この技法は本当に上手いです。

本書で熱い思いを語り、読者を熱くさせてから広告をお土産のように付け足す。

私はその方法でまんまと絵本をAmazonでポチりました。


別に西野さんの回し者ではありませんが、

革命のファンファーレもえんとつ町のプペルも、かなりオススメの一冊です。