元400メートルハードル日本代表の、為末大さんによって書かれた本です。
アスリートのイメージにそぐわない、ネガティブなタイトルの本書です。
しかし為末さんの冷静な分析と、面白い考え方がたくさん詰まっているため、
食わず嫌いをせず、ぜひ一読していただきたい一冊です。
一つ一つの項が短くまとまっているため、
普段読書慣れしていない人や、隙間時間を埋めたいと思っている人にオススメの本です。
もくじ
①キーワード
1.楽をしようが苦労しようが、金メダルは金メダルである
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為末さんは学生の頃は短距離の選手でした。
しかし高校生の頃、自身の壁に当たります。
それまでは順調だった短距離人生にケガがつきものになりました。
レースによってはライバル選手に勝てなくなることもあり、
高校最後の大会では、先生から100メートルの出場を取り消されてしまいました。
そのときにエントリーしていた400メートルでは結果が出ましたが、
花形とも言える100メートル走への未練も断ち切れずにいました。
そんなある日、400メートルハードルのメダリストの走りを見て、
為末さんはこのように考えるようになります。
「一〇〇メートルでメダルを取るよりも、四〇〇メートルハードルのほうがずっと楽に取れるのではないか」
「楽をしようが苦労しようが、金メダルは金メダルだ」
2.踏ん張って一番になれる可能性のあるところでしか戦わない
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多くの人は、「手段を諦める」こと諦めと呼ぶことがほとんどです。
しかし、目的さえ諦めなければ、手段自体は変えてもいいのだと思います。
為末さんは100メートル走という手段は諦めました。
しかし、「アスリートとして世界を相手に戦う」という目的を忘れずにいたため、
現役時代は数々の輝かしい功績を残すことができました。
3.人生は可能性を減らしていく過程でもある
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「何かを始めるのに遅すぎることはない」
「人生は挑戦だ」
素晴らしい考え方です。私もいつまでも挑戦の心を忘れずにいたいものです。
しかし残酷な話ですが、歳を取れば取るほど、
その人の可能性の大きさは小さくなることも事実です。
「プロ野球選手になりたい」
という夢でも、
野球を始めた手の小学生が言うのと、
31歳の埼玉在住身長165センチ体重55キロのひょろひょろサラリーマンが言うのでは、
可能性に大きく違いがあります。
私が今からプロ野球選手になるというのは不可能でしょう。
子供の頃に夢見ていたプロ野球選手を諦めたからこそ、
今は本業やブログに集中することができているのです。
4.人間は本気で挑んだときに、自分の範囲を知る
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一つの可能性を諦めれば、その分可能性のあるところで戦える時間になります。
それではどのようにして、諦めるものとそうでないものを見極めればいいのか?
それには「本気で、全力で取り組むこと」です。
何にも本気で試した経験が少ない人は、「自分ができる範囲」についての体感値がありません。
100メートル走を30秒代でしか走れない人は、サッカーをしても大成しない可能性が高いです。
けれどもそれは本気で100メートル走に取り組み、自分の限界を知ったからこそ、
挑戦していないサッカー選手も諦めることができます。
本気で100メートルを走ったことがない人は、自分の限界タイムを知りません。
限界を知らないが故に、自分が勝てる見込みの薄いサッカーという舞台で戦い続けてしまうのです。
運動に限らず、何に関しても一度は一生懸命に挑戦します。
自分の中の経験をたくさん積むことにより、
- 自分はこの分野は苦手だな
- この分野は努力しなくても結果が出せるな
- これは難しいけど挑戦することは苦じゃないな
といった、さまざまな自分なりの価値観を持てるようになります。
為末さんは本書でこのように表現していました。
転ぶことや失敗を怖れて全力で挑むことを避けてきた人は、この自分の範囲に対してのセンスを欠きがちで、
僕はそれこそが一番のリスクだと思っている
5.「諦める」をポジティブに言い換える
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自分が成功しなかったのは、その分野に合わなかっただけです。
堂々とやめましょう。
しかしその場合、意外と本人よりも周りの声が煩わしかったりします。
- あきらめるの?
- もっと頑張れば結果が出るかも知れないのに
- 君のためを思って言ってるんだよ?
本人のことを思ってくれる気持ちはありがたいですが、
失敗し続けても、その人は責任をとってくれるわけではありません。
「私が諦めずに続けたとして、どのような結果を残せると思いますか?」
こう返したときに明確な答えてあれば、諦めるのを考え直す価値はあるかも知れません。
けれども大概はふわっとした答えが返ってくるでしょう。
そんな時は
「他にやりたいことができたので、選び直すことにしました」
「目標を修正することにしました」
と、気持ちだけ受け取って笑って受け流しましょう。
繰り返しになりますが、
その人はあなたの失敗の責任をとってくれません。
6.人は万能ではなく、世の中は平等ではない
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世の中で本当に平等なことって意外と多くはありません。
みなそれぞれ生まれもった資質やセンスがあります。
「自分には全く才能がないとしか思えないところでする努力」と
「才能があると思えているところから始める努力」では苦しさが全く違います。
あなたが苦しいと思っていることは、
あの人にとっては娯楽だったりします。
それが積み重なった結果、成果が出る可能性が高いのは火を見るより明らかです。
7.手に入れることの幸福、手放していくことの幸福
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何でもかんでも手に入れられれば幸せであると、多くの人は勘違いしています。
しかし全部を手に入れたいという発想は、
「できていない」「足りていない」という不満と常に隣り合わせです。
どんな可能性もあると言う状態は、何にも特化できていない状態でもあります。
できないことの数が増えるだけ、できることがより深くなるものです。
何か一つだけでも「諦めないこと」を決め、
「それ以外はどっちでもいい」と割り切ることによって、
一つ幸福に近づくのではないでしょうか。
②そのほかの気になるキーワード
- 憧れの人は自分の延長線上にいるか?
- 「あなたには向いてない」と言ってくれる人
- 一意専心よりオプションを持つこと
- いつまでも自分で決められない人たち
- 「俺的ランキング」でいいじゃないか
③まとめ
1.アスリートの人生全体を考えさせられる
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本書を通して、為末さんはアスリートの人生全体を考えられています。
30代で引退することの多い「アスリート人生」ではなく、
100年近く生きる「その人トータルの人生」です。
現役プロ野球選手が、
- サッカーでもプロを目指します
- モデルにも挑戦します
- 事業を始めました
と言い始めたら、「いや、本業頑張れよ」と言われると思います。
けれども、
「もし彼に野球で一流になる可能性がなかったら?」
「現役に関わる大きな怪我をしてしまったら?」
「スポーツに集中して、事業家としての可能性をつぶしてしまったら?」
為末さんは一意専心で取り組ませたがる、
アスリートの周りのメディアやファンの人へ警鐘を鳴らしてくれているのが伝わってきました。
2.我々の人生にはどう活かすのか
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アスリートファーストであることが伝わってきた本書ですが、
それはアスリートに限らず、どの業種の人にでも言えることではないでしょうか。
何か一つ諦めないものを決め、
それ以外をほどほどにこなすことで、
その人全体の人生がより豊かになる考えが「諦める力」なのだと感じました。
3.諦めてもゼロにはならない
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諦めるってすごく勇気のいることです。
それまでの努力がなくなってしまう感覚になります。
けれども、本当にゼロになってしまうのでしょうか?
もしあなたの会社に、イチローさんが入社面接に来たらどう思いますか?
「彼は野球しかしてこなかった人生なんだな」
と不採用にしますか?
彼は「現役のメジャーリーガー」ということを諦めて引退をしました。
しかし彼の経歴はゼロになったわけではありません。
どこの業界にいっても、それまでの彼の功績を評価し、
一定のところからスタートさせてくれるはずです。
何かを諦めても、その人がゼロになってしまうわけではありません。
全力で取り組んできたものがあるからこそ、
次のステージではゼロよりは進んだところからスタートできるはずです。