【書評】叙述トリック短編集【極めてフェアな一冊】

なるほどね

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叙述トリックの好きな私が、本屋さんで一目惚れした「叙述トリック短編集」をレビューします。

叙述トリックものが好きな人も嫌いな人にもオススメできる、ライトな一冊です。

もくじ

1.あらすじ

*注意! この短編集はすべての短編に叙述トリックが含まれています。

騙されないよう、気をつけてお読みください。

本格ミステリ界の旗手が仕掛ける前代未聞の読者への挑戦状!

叙述トリック短編集Amazonページ

2.こんな人にオススメ

  • 叙述トリック好き
  • 変人な探偵が好き
  • 長編小説は苦手

3.叙述トリックってなに?

「そもそも叙述トリックってなんぞや?」

と言う方はこのツイートをご覧ください。

簡単に言うと、

『読者の思い込みを利用した、作者の仕掛ける罠』

といったところでしょうか。

4.叙述トリックってズルくない?

私は叙述トリックものは好きです。

仕掛けがわかったときの「やられた!」という感覚が大好きです。

けれども同時にこうも思います。

「それって書いてないからズルくない?」

「自分のこと『ワシ』っていう人は爺さんだろ」「なんで子供なんだよ」

みたいな。

5.真正面から叙述トリックを宣言

そこいくと本書は「私は叙述トリックを使います」と、

タイトルから宣言してくれています。

このタイトルに衝撃を受けた私は、文字通り本屋さんで衝動買いをしてしまいました。

前書きにも

  • 叙述トリック使いますよ〜
  • こんな仕掛けを用意してますよ〜
  • 短編集だけど繋がりがありますよ〜
  • 何話目ではここを注目して読んでくださいね〜

と作者自ら叙述を楽しんでいるのが見られます。

その仕掛けも嘘偽りなくフェアに行っており、

最終話でしっかりと仕掛けが回収されていく様子は本当に見事でした。

6.事件は総じてライト

本作で登場する事件は総じてトーンが軽いです。

国家転覆や銀行強盗などは出てきません。

せいぜい「トイレを誰が掃除した」とか「落書きをしたのは誰」とかその程度です。

筆者さんが意図してそうしたのかは分かりませんが、

事件自体が軽い分、叙述トリックの仕掛けを読者が推理しやすいような気もしました。

私は叙述トリックものは本編の事件よりも、

作中の仕掛けが気になってしまうタイプです。

なのでより楽しめたかなと思いました。

もしかしたら頭がキレッキレの方には読んでるうちに仕掛けがわかってしまうかもしれません。

でもこれも「叙述トリックです」と宣言してしまった物語の宿命でしょうか。

7.私は二話目が好き

どの話もそれぞれのトーンがあった面白かったです。

ちなみに私は二話目が好きでした。

隠キャの女の子が出てくるのですが、

その心理描写が同じ隠キャの私にはわかりみが深かったです。

  • 人に喋りかけられない葛藤
  • 考えは渦巻くけど行動できない虚しさ
  • 陽キャ人間の眩しさ

この辺が涙が出るほど共感します。

喋らないからって喋りたいことが頭の中に何もないのではないし、

ましてや何も考えていないわけがないのに。

よくこの気持ちを言語化してくれたなと、勝手に感動しておりました。

8.まとめ

叙述トリックが好きな人はもちろん、

今まであまり触れてこなかった人も、ある意味入門書としてオススメです。

そしてさらにタイトルにある通り短編集なので、

長編小説のぶ厚さに参っている人にもとっつきやすい一冊になっております。