【書評】目からウロコのコーチング【人は話を聞くのが下手】

なるほどね

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「コーチング」という言葉を目にすることが多くなりました。

書店に行ってもコーチング関連の本は増えたような印象があります。

部下を持つ上司、子を持つ親、友達仲間から好かれたいと思っている人・・・

そんな、人間関係を今よりも少しでも改善させたいと思っている全ての人に読んでもらいたい一冊です。

もくじ

1.そもそもコーチングってなに?

超ざっくりというと、「究極の聞き上手」です。


本書ではこのように説明されています。

会話によって相手の優れた能力を引き出しながら、

前進をサポートし、自発的に行動することを促すコミュニケーションスキル

もう少し言うと、

「こちらから『答』を与えるのではなく、相手の中にある『答』を一緒に探し出す」

と言う考え方です。

そのためになにをするのかというと、やることは単純です。

質問して、聴いて、受け入れる。

2.スポーツのコーチのことか?

スポーツのコーチのように、

技術・考え方・方法を教えるというのは、「ティーチング」というコミュニケーション方法です。


コーチングとティーチングは対極にある考え方です。

  • コーチング=相手の前進をサポートする
  • ティーチング=指示命令をして行動させる(相手を操作する)

指示・命令をされると、人は萎縮し、のびのびと自分のパフォーマンスを発揮することができません。

相手の顔色を伺うことばかりに意識が向いてしまいます。

また、指示をされたこと以外はしない人間になってしまいます。


コーチングは「自発的に行動すること」を目指します。

考えを相手に伝えることは大変ですが、それは一つ一つ命令をすることも同じです。

3.コーチングでどんな人になれるのか

とにかく聞き上手になれます。

聞き上手の周りには常に人が絶えません。

自分に特別な才能がないと思う人こそ、

コーチングで「話を聞いてもらいたい人」になり、

誰からも信頼される人へなってみてください。


仕事ができる、地頭がいいと言うのはそれだけで貴重なスキルです。


それと同じくらい貴重なスキルは「人に信頼される」ということです。

4.お前の意見は聞いてない

質問をする際に気を付けてもらいたいのが、

「自分が問題解決しよう」という発想を捨てることです。

この発想が捨てられないと、相手はなかなかコーチに心を開きません。


たとえばこんな悩みを抱える人に、こんなアドバイスをしたことはありませんか?

例)テストの点数がよくなかった
「勉強が学生の本分だからね。俺が使ってたおすすめの問題集いる?」
「私も点数が伸び悩んだときがあった。私は朝方人間だから、あなたも早起きして勉強してみたら?」

このダメ意見二つは質問で返していますが、

これは質問の形にした、「自分の意見」です。


自分の意見を押し付けないようにするには、

「相手を主人公にしてあげる」という考えがとても重要です。


相手を主人公にしてあげると、こんな質問に変わってきます。

  • 目標にしてた点数があったの?
  • 勉強に集中できないとき、周りにはなにがあった?
  • 周りに助けてくれる人はいそう?

いつでも「相手の中に答えがあるんだ」

「自分はそれを見つける手伝いをしているだけなんだ」

という意識をしていくと、

押し付けがましい自分の意見は、ひとまず傍に置いておくことができます。


そしてそんな質問をされた相手は、

解決策を「自分で思いつく」ことができます。

人に押し付けられた古臭い問題集に手をつけるのは気が重いですが、

自分で「この問題集を一日◯ページやる」と決めた人は、意外とそれをこなしていくものです。

5.自分が聞きたいことではなく、相手が話したいことを聴く

わたしの肌感なのですが、

「自分は聞き上手だ」と言う大概の人は、自分を聞き上手だと勘違いしています。


人は会話をすると、大概話の100%を聞かずに自分の意見を言い出します。

コーチングでは自分の意見は最後の最後の最後です。

相手の意見や考えを120%絞り出し切り、

相手が出涸らしになって初めて、自分のアドバイスや考えを簡潔に伝えます。

コーチングの際に重要なのは

  • 思い込みを捨てる
  • あらゆる立場を忘れる(上司部下、親子兄弟、先輩後輩etc.)
  • 相手を評価しない
  • 相手の話を予想しない
  • 相手が話しているときに結論を思い浮かべない
  • 要領よく話すことを求めない

話を聴くというのはしゃべることの何倍も大変で、ものすごく忍耐力のいる作業です。

6.私の気持ち伝える

コーチングでは受け入れることを大事にします。

決して相手を評価してはいけません。


受け入れるとは「今ここでの自分の気持ち」を伝えることです。

例)部下が初めて1人で仕事をこなしてきた
NG 「よく頑張ったな」
OK 「一人前になってくれて嬉しいよ」

NG例の主体は「あなた」です。

「(あなたが)頑張ったな」という意味が隠れています。


それに対してOK例の主体は「私」です。

「(私は)嬉しいよ」という意味を相手に伝えています。


自分の気持ち・感情に自分自身が気づきには訓練が必要です。

常日頃から自分の気持ちを言葉にしてアウトプットし、

実は自分がなにを考えているのかを、しっかりと表現できるようにしておきましょう。

7.コーチングの手順

「質問する、聴く、受け入れる」

基本的にはこれさえ押さえれば、多少やり方に問題があってもある程度うまくいきます。

その基本を抑えつつ、このような流れを意識すると、スムーズなコーチングに持っていきやすいです。

7-1.目標設計

相手がなにを求めていて、自分がどうなりたいのかを質問する。

大きな目標を聞けたら、実行可能な中目標・小目標も立てていく。

7-2.現状の把握

「自分が今どこにいるのか」を洗い出し、目標との距離を考える。

「自分自身の能力」を確認しながら、「どういうアプローチができるのか」を質問しながら考えていく。

7-3原因・背景を探る

今目標に達していないのには必ず「原因」がある。

その障害となる本当の問題は何かを探李、目標への道筋を整える。

7-4行動する

実際に行動するため、たくさんのアイデアを考える。

時には第三者の知恵を借り、普段のやり方や思い込みによるパターンを極力排除する。

7-5.提案・フォロー

行動することが決まった後、相手が求めているようなら簡潔なアドバイスをする。

そしてもし行動を起こせなかった場合、その「原因」「それを取り除く方法」を改めて考える。


ざっくりとこんな手順で進めていきます。


7-3の原因を探る際、愚痴がとまらなくなる人もいます。

愚痴は頭を整理するために時には必要になることがあります。


けれどもずっと過去の不満を話していても、話は前に進みません。

長くなりそうであれば、質問によって話を切り替えてみてください。

  • 核心から逸れていますけど、このまま続けますか?
  • この話では気分が悪くなりませんか?
  • それを改善するためにどのような行動を起こしますか?

文字にするとキツめの言い方ですが、

相手に圧迫感を感じさせないような表情と言い方を心がけてください。

8.感想

今でこそリモート中心の世の中になり、人と人が対面する機会も少なくなりました。

そんな今だからこそ、数少ない直接話す機会のバイブルになり得る、

「コーチング」という技術を取得するのに最適な一冊です。


あなたが上司なら、実際に現場に出るのは部下の役割でしょう。

自分が1人しかいない分、部下が自分の手足となって働いてくれています。

お客様の意見を直接聞けない上司は、

部下の話をしっかりと聞かないと会社に意見を反映させることはできません。


それは相手が子供でも、奥さんでも旦那でも、友達でも後輩でも誰でもそうです。

コーチングの考え方を持つと、自分ができないことをやってくれている彼らへの見方が変わります。


まずは聞くことです。

耳は二つ、口は一つです。


本書全体で言っている主張は「コーチングは質問する、聴く、受け入れる」と言うことで一貫しています。

やること自体はかなりシンプルです。


けれども「シンプル=簡単」とは限りません。

理解と実践には大きく乖離があります。

ぜひ本書を読んで理論を学び、

あなた本来の人間力で、悩める方をコーチングしてあげてください。