【書評】東大読書【能動的に本と議論を】

なるほどね

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最近は「速読」や「瞬読」といった読書法が流行っています。

確かにたくさんの情報が動いている現代では、そのような読書ができたら大きな力になります。


けれどもせっかく読んだ本の内容を、明日には忘れているようではせっかく読書した時間が無駄になってしまいます。

本書では一冊の本とじっくり向き合う、速読とは対極の「深読」にフォーカスした読書法を紹介しています。

ぜひ皆さんも「字を追うだけの読書」は卒業して、

作者と対話する「能動的な読書」に挑戦してみましょう。

もくじ

1.こんな人にオススメ

  • 本を読んでもすぐに内容を忘れてしまう人
  • 面白い本にしっかりと向き合いたい人
  • 論理的な考え方を身につけたい人

2.そもそも地頭力とは?

地頭力とはざっくりというと、「考える力」のことです。

知識を得るだけでなく、「その知識をいかに運用できるか」というのが本書で語られる地頭力です。

3.地頭力、読む力を鍛えるには?

東大生に備わっているこの2点の大きな力ですが、

本書の5つの柱になる力を鍛えることにより、この2点を双方とも伸ばしていくことができます。

  1. 読解力・・・素早く、かつ正しく文章の内容を理解し、文章を読み込んで理解する力
  2. 論理的思考力・・・より深く文章を理解し、論理の流れがクリアに追えるようになる力
  3. 要約力・・・他人に説明しやすい形に噛み砕く力
  4. 客観的思考力・・・様々な視点からの意見、多角的なものの見方を持つための力
  5. 応用力・・・得た知識を他のところにも活かせるように、自分のものにする力

この5つを鍛えるにはそれぞれ、

  1. 装丁読み、仮説作り
  2. 質問読み、追求読み
  3. 要約読み、推測読み
  4. パラレル読み、クロス読み
  5. 仮説答え合わせ、アウトプット要約、自分なりの結論

このような具体的な読書術を紹介されています。

詳細は本書を読んでいただきたいので、

今回は『装丁読み』『要約読み』に絞って解説をさせてもらいます。

3-1.装丁読みとは

そもそも文章を読めない原因の多くは準備不足によるものです。

まずいきなり本文を読み込むのではなく、

カバーや帯、そして著者の情報をそれぞれ噛み砕くことにより、

本文の内容もスムーズに入ってきやすくなります。

東大生が文章を読む力があるのは、「文章の外からヒントを得る力」があることが大きいです。

◯装丁読みの方法

  1. タイトルから引き出した情報を、付箋に1つずつ書く
  2. 帯の両面から得られる情報も、一つずつ付箋に書く
  3. 著者のプロフィールから得られる背景を、同じように付箋に書く
  4. これらの情報を本の見返し(表紙の裏側)に貼っておく
  5. 難しい文章や読書を中断するタイミングで付箋を見返す

装丁読みのポイントとして、引き出す情報は極力分解して考えてみることです。


例えば私の手元にある「1%の努力」(ひろゆき著 ダイヤモンド社)であれば、

「1%の努力ってなんだろう」

「残りの99%なんだろう」

「ひろゆきの人生論」

「ひろゆきの考え方」

「ひろゆきは合理的な考え方のイメージ」

「そちら側とはどちら側だろう」

「1%しか努力しないというのは、最小限の努力で最大の成果ということだろうか」

「一番売れている本ということは真新しく、世に合っている考え方なのだろうか」

「ひろゆきは2ちゃんねる開設者」

「YouTube生配信で視聴者の質問に答える」

「多数の訴訟を乗り越えている」

「パリ在住」

「幼少の頃は団地に住んでいたのだろうか」

「ニーズの話でなくなったら困るものだから、ひろゆきの主観というよりは『世の中から』という括りだろうか」

・・・ざっくりとこんな感じでしょうか。


情報は多ければ多いほど、

見返したときの見直しになります。

あくまで本文の外から読み取れる情報、予想になるから、

書き直したり、予想と外れていたら捨ててしまって構いません。

もちろん読みながら付箋を足していくのもOKです。

3-2.要約読みとは

装丁読みで本文をしっかり予想しながら読み込むことができたら、

今度は他人に説明できるよう、自分の言葉で説明できるようにします。

読書をする上で一番大事なことは「内容を忘れないこと」ではなく、

「わかった気にならないこと」です。


「わかった気になる」とはどのようなことなのかというと、

「その本で著者が何を伝えたかったのかを一言で表せない」ということ。

自分で考えるためには、著者の考えをしっかり読み取ることが大事になります。


ここを疎かにしてしまうと、

私は主夫です。妻に働いてもらっています。

→「世の中には結婚したくてもできない人もいます」

→「女を働かせるなんて差別です」

→「LBGTの人の気持ちも考えてください」

などという意味不明な論理しか展開できなくなってしまいます。


ここで目指すことは

著者の「意見に賛同する」のではなく、著者の「主張を正しく理解する」こと。

◯要約読みの方法

  1. 1節分・1章文を読み、その中から「要約的な一文」を探す
  2. その一文を踏まえて、ノートに30字以内でその「まとめ」を書く
  3. 「まとめ」を踏まえて、章全体・本全体のまとめを140字以内で作ってみる

もちろん3.はTwitterでまとめられる字数になっています。


ここで大事なのは「誰が見てもわかるように」書くことです。

本は権威性を持たせるため、少々難解な言葉を使っていることが多いです。

それを「読んでない人や中学生」にでもわかるように意識すると、

要約力はグッとレベルが上がりやすくなります。


私もブログ、Twitterで要約していますが、

要約読みは結構キツい作業です。

良書であればあるほど、その本が好きであればあるほど、

「この情報は切れない」「この考え方も盛り込みたい」

と思いたくなってしまいます。


しかしここでグッと堪えて取捨選択をする勇気を持ちましょう。

「君の話は要領を得ないな」

と言われる原因の大半は、「情報を詰め込みすぎている」ということが多いと思います。

「より少なく、しかしより良く」

要約力を高めるため、思い切って捨てる技術も持てるようにしましょう。

4.まとめ

ご覧の通り、本書の方法では一冊とじっくり向き合うため、

多くの本を高速で読み倒したい方には、少し不向きの方法だと感じました。

けれども速読至上主義者の方でも、

  • 色々な本に出会うために、高速で本を読み回す
  • 自分がこれだと思った本では東大読書を使う

など、本によって読書法を使い分けるのはアリだなと思いました。


本書の考え方は本を読む時だけではなく、

それ以外の情報収集の時にも意識しておくべき思考法ばかりです。


「この人の言っていることは正しいのかな?」

「この記事の反対意見はないのかな?」

「私はこの意見です。理由は〇〇で事例は△△です」

など、5つの柱の力は鍛えれば鍛えるほど、萬のことに生かしていけそうです。


5つの柱を全ていっぺんに鍛えようとすると結構な手間なので、

まずは自分に足りないなと思う力に、一つずつ時間をかけていくのはどうでしょう。

  • 読書に深くのめり込みたいなら「装丁読み」「仮説作り」
  • 色々な視野を身につけたいなら「検証読み」
  • ロジカルにものを考えたいなら「取材読み」「追及読み」

私はブログを書く際に要点がごちゃごちゃになってしまうため、

「要約読み」「推測読み」で要約力から鍛えていこうと思います。


また、本書では欄外に筆者オススメの本が紹介されています。

さすがにアウトプット要約を実践されているだけあり、

紹介の仕方が絶妙に上手です。

そのままその本の帯になってもおかしくないような、

短い文章の中に、「この本読んでみたいな」と思わせられる紹介のされ方をされていました。


そして本書では本の読み方だけでなく、本の選び方も解説してくれています。

「読まず嫌い」にならないための選書の仕方は、大変参考になりました。