「認知症界の長嶋茂雄」と言われた、長谷川和夫著、「ボクはやっと認知症のことがわかった」。
本書は自らが認知症になった認知症専門医が、自らの体験をベースに記された、日本人へのメッセージです。
長谷川さんは認知症に関する、日本人が持っている偏見や差別を払拭するため、
本書の執筆にあたりました。
もくじ
1.こんな人にオススメ
- 認知症ってなに?
- 認知症って怖い
- 認知症になった人が周りにいる
2.そもそも認知症ってなに?
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認知症の定義とは、成年期以降に、記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたすようになった状態をさします。
ざっくりというとこんな感じです。
- 記憶力が下がります
- 言語力や思考力が下がります
- 日常生活に支障が出ます
- 一度はちゃんと発達した脳機能が弱まります
つまりは最初から障害を持って生まれた方は、認知症とは定義しないそうです。
物忘れをするというのが認知症のイメージだと思います。
しかしその症状は様々です。
イメージ通りの物忘れをする方もいれば、
物覚えはしっかりしていても、幻視を見るタイプの方もいます。
そして簡単に自分の思っていることを表現する人もいれば、
もちろんそうでない方もいます。
また、必ずしも若い頃に脳を使わなかったから機能が弱まるのではなく、
外傷や感染症、結構障害などの様々な病気や外的要因が原因になることも多いです。
二〇一七年十月、神奈川県川崎市内で認知症に関する小さな講演会がありました。
中略
「みなさんの前でこういうと(主催者が)困るかもしれないけれど、じつは(ボクは)認知症なんですよ」
長谷川 和夫,猪熊 律子. ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 (Kindle の位置No.149-153). Kindle 版.
3.認知症は怖くない
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80代、90代と年齢を重ねると、認知症になる人の割合が増えていきます。
そして100歳を超えると、ほとんどの人が認知症になると言われています。
認知症自体決して特別なものではなく、
むしろ長く生きていけば不自然なものではありません。
そもそも認知症になったからといって、
ある日突然全く別の人物に変わってしまうわけではありません。
その人の人生が地続きで続いていくのです。
そして認知症は固定するわけではありません。
一度なってしまったらおしまいということではないので、
周りの人たちも「なにもわからなくなった人間」と一括りにしないであげましょう。
でも、ボク自身は、「ボク、認知症」と人さまにもいって、
認知症とわかってもらったうえで付き合っていくのがよいと思っています。
自分自身も、認知症ときちんと向き合って。
少なくとも、認知症であることをさげすんだり、
恥ずかしいと思わせてしまったりする社会であってほしくはありません。
長谷川 和夫,猪熊 律子. ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 (Kindle の位置No.305-308). Kindle 版.
4.認知症は固定しない
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時間や体調によって、認知症も具合が良くなったり悪くなったりします。
「今日はなんか寝起きの調子はいいな」と感じる日は誰にでもあると思います。
認知症も似たようなことが起こります。
著者の長谷川さんは、午前中は頭が冴えていて、
昼過ぎくらいから少しずつ疲れてぼーっとする時間が増えるそうです。
そして一度認知症にかかってしまうと、
周りの話していることが全くわからなくなるわけではありません。
認知症になると思考がゆっくりになる人が多いですが、
馬鹿にされたり、無視されたときの嫌な感情はしっかりと感じています。
いちいち言い返さないのは、なにもわかってないからではないのです。
クラスや職場で、「ああ、今私の悪口言ってるな」と感じながら、
なにも反応しなかった人は少なくないでしょう。
おそらくそれと同じことなのではないでしょうか。
ただ一つ、よくないこと、決してやってはいけないことがあります。
それはクルマの運転です。
これだけは絶対、やめたほうがよい。
事故を起こして、人を傷つけたらたいへんです。
長谷川 和夫,猪熊 律子. ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 (Kindle の位置No.1195). Kindle 版.
5.認知症の人は孤独
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悪口を言われ、厄介者扱いを受け、家の仕事を全て取り上げられる認知症の方々は、
みな往々にして孤独を感じています。
認知症だろうとなんだろうと、無視されたり軽く扱われたりした時に受けるダメージは一緒なのです。
そのために、家の仕事を奪わないであげましょう。
話を聞くことを疎かにしないであげましょう。
認知症はお迎えが近づいてきた人に対して、
神様がくれた恐怖からの痛み止めなのかもしれません。
ある晩、家内とボクと下の娘が食事に行ったところ、
アルツハイマー型認知症となった家内の父親がこういったのです。
「みなさまはどなたさまですか?どなたかわからなくて困っているんです」
中略
下の娘がこういいました。
「おじいちゃん、私たちのことをわからなくなったみたいだけど、
私たちはおじいちゃんのことをよく知っているから大丈夫。心配いらないよ」
長谷川 和夫,猪熊 律子. ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 (Kindle の位置No.1238-1244). Kindle 版.
6.そのほかの気になるキーワード
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- ショックだったか
- 治る認知症も
- 「93から7を引く」は間違い
- 納屋で叫ぶ人
- 有効な薬
- 死を上手に受け入れる
7.まとめ
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ライターである猪熊さんとの共著ではあるものの、
認知症の方が一冊の本を書き上げることに驚きました。
「認知症=自分も他人もわからなくなる」という、典型的な偏見を持っていた私に、
心のビンタを浴びせてくれた一冊でした。
もちろん症状の程度にもよると思いますが、
自分の親が認知症になったときのことを想像してしまいました。
本書を読む前の私と、読んだ後の私では、
両親に対する優しさが違うと思います。
本書のサブタイトルは「自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言」とあります。
認知症になった筆者様の無念の文章なのかと思いましたが、
案外あっけらかんとしていることに驚きです。
人生100年の時代になってきました。
おそらく認知症はこれから国民病となってくるでしょう。
本書を手にとっていただき、
「親がなったらどうしよう?」
「自分がなったらどうしよう?」
ほんの少しだけでも、こんなことを考えてみるのはいかがでしょう。
「先生、聞きたいことがあるけど、質問していいですか」とおっしゃいます。
「もちろんです。どうぞ」というと、
「どうして私がアルツハイマーになったんでしょうか。ほかの人じゃなくて」
と聞くのです。
みなさんだったら、なんと答えますか。ボクは答えられなかったな。
長谷川 和夫,猪熊 律子. ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言 (Kindle の位置No.203-205). Kindle 版.