【書評】探偵ガリレオ【謎解きは科学の力で】

なるほどね

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ここから始まった、天才物理学者・湯川学の物語。

東野圭吾著、ガリレオシリーズの記念すべき一作目をレビューしていきます。

もくじ

1.全五話からなる短編集

ガリレオシリーズは基本的に短編集です。

たまに「容疑者Xの献身」や「真夏の方程式」などの一冊一話型の長編が挟まります。

本書は前者の短編型です。

全五話からなる短編が、さらにシーンの切り替わりごとに番号で区切られているため、

ちょっとした隙間時間や、読書苦手な方にもとっつきやすくなっています。

2.科学を全面に押し出したトリックの数々

ガリレオシリーズの特徴として、事件のトリックに科学的アイテムや知識が使われることがほとんどです。

一作目の本書も、その特徴が遺憾なくあらわれています。

超音波を発生させる装置や、レーザー照射器を使ったり、ゴリゴリに科学アイテムを出してきます。

推理小説としては飛び道具を使いまくるシリーズなので、文系の私にとっては、

「そんなのわかるかいww」

の連続なのが、開き直っていて面白いです。

3.マイペースな湯川

主人公湯川学は若き物理学者です。

いわゆる天才タイプで、後述する草薙は助言を求め、たびたび彼の研究室を訪れます。

天才タイプにありがちな、

  • 変人
  • マイペース
  • 皮肉屋
  • 子供嫌い

といった特徴を兼ねそろえています。

ただ、彼はありがちな天才探偵と違うのは、

話だけを聞いて答えを導き出すような、安楽椅子探偵ではありません。

状況をもとに仮説を導き、それを実験してから答えを出すタイプです。

なので刑事草薙とともに、現場に顔を出すことが多いです。

よくある天才タイプの探偵は、

答えを出してから自分の考えを発表するのに時間差があることが多いです。

「お前、もうトリックがわかったのか!?教えてくれ!」

「まあそれは後でいいじゃないですか」

みたいな。


私は個人的にそれがあんまり好きではなくて、

『賢ぶらないで早く言えよ!』

『もどかしいな!!』

と思いながら読むことが多いです。


けれども湯川は

「仮説を実験して証明しないと言いたくない」

というポリシーがあるので、その焦らしに信憑性が生まれます。

好きではなかった焦らされる演出も、

東野圭吾さんの仕掛けによって、

「もどかしい!早く読みたい!」

と思わせられるのは、ガリレオシリーズの魅力の一つかもしれません。

4.湯川に振り回される刑事草薙

湯川の親友である刑事草薙は、典型的なワトソンタイプの人間です。

ガリレオシリーズは性質上、多くの化学アイテムが出てきます。

私のような非科学人間は、

「これが犯行に使われた電磁波放射装置だよ」

と言われても、いまいちピンときません。

けれども同じ非科学人間である草薙がいることによって、

私と同じ目線で物語が進行していくため、

ストーリー自体に置いてけぼりにされることはありません。

草薙自体もデクのぼうというわけではなく、

刑事らしい観察眼や捜査能力が遺憾無く発揮しています。

刑事として有能な人間のため、湯川も一人の友人として、

皮肉を交えながらも、物語全体から彼への敬意を表しているのが見て取れます。

5.私が好きなのは「第四話 爆ぜる」

全五話の中で、私は四話の「爆ぜる」が好きです。

自分勝手な犯人に対し、

結果を出している登場人物が、武士道みたいなものを叩きつけるのは、

見ていて爽快でした。

6.まとめ

メディア化されているので有名なシリーズですね。

ドラマ版では湯川の相方が一貫して女性です。

けれども小説版では「容疑者Xの献身」の前は草薙が相方です。

それからは内海という若い女性の刑事が相方になります。

批判でもなんでもなくただの感想なのですが、

私は草薙の「振り回されながらも皮肉を言い合う昔ながらの友人」というスタンスが好きだったので、

個人的には小説版の方の人間関係が好きです。


ドラマ版とはまた違った顔を見せてくれるガリレオシリーズの一作目。

短くまとまっており、場面転換や心理描写もわかりやすくなっているため、

普段小説を読まない人、そして私のような非科学人間にもおすすめできるシリーズです。